放送大学鳥取学習センター 2023年度公開講演会「小惑星リュウグウからのメッセージ:太陽系の起源と人類の今後」
太陽系の成り立ちに関する研究は、主に起源が不明瞭でかつ地球上での汚染が避けられない隕石の解析によって行われてきました。しかし、探査機「はやぶさ2」による地球外物質サンプルリターンは、目的とする小天体の表面観測を基に採取された、地球上での汚染が限りなく少ない試料を人類にもたらしました。
私たちは、「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料5.4gの内16粒55㎎を用いて、三朝で精密かつ詳細な総合解析を世界に先駆けて行いました。試料の分析結果と現地で実施した観測結果を合わせて議論することが可能となったことで、生命の起源物質と考えられるアミノ酸や大量の水の形成過程など、リュウグウの起源と進化過程を明らかにすることができました。
本講演では実際の分析結果を紹介し、太陽系形成以前の星雲の時代から現在のリュウグウに至るまでのダイナミックな歴史をお伝えします。この結果を基に、人類の月での自給自足の可能性についても述べたいと思います。
講師
中村 栄三 氏(岡山大学名誉教授 自然生命科学研究支援センター特任教授)